なぜ英語は音から学んでいく必要があるのか。
これは英語に限らず、あらゆる言語においていえることですが、そもそも『文字』という人類の発明は『話す』という行為の後に生まれた歴史的な背景があるのです。
上記に倣うならば、言語における『文法』や『ライティング』といった技術は『ワード』や『エクセル』といった『アプリケーションソフト』にすぎず、
一方で『音声』は言語の『OS』とでもいうべきものでしょうか。
赤ちゃんに『リンゴ』という言葉を教える手順を考えてみましょう。
おそらくほとんど母親が、赤ちゃんに『赤くて丸い果物』を見せて
『これはリンゴよ。』と、音声と実物を一致させる方法で教えこんでいくはずです。
対象がどういったものであるか理解するためには『音声』とそれを表す『映像』が優先され『文字』は後からついてくるものにすぎない、
母親が赤ちゃんに施したこの手順によって、僕達は日本語により目に映る大量の情報を処理することが可能になったのです。
仮に文字で『リンゴ』と書いて教えても、
実物がどういうものか認識されていないと『リンゴ』という発音は出来ても『じゃあリンゴっていったい何なの?』と、子供達は混乱してしまうでしょう。
書かれた文字(エクリチュール)というのは、話される言葉(パロール)の1コンマ後に発生するものであり、
やはり語学は『音』から取り入れるべきだという結論に帰着します。
しかし一部で、何でも吸収するスポンジのような赤ちゃんの脳と、成熟した大人の脳を一緒にしてはいけない。
母国語が染みついてしまっている大人は、いくらリスニングを続けていても効果はない…という意見もあります。
さらには、音声の中に知らない単語や文法があると、脳がそれらを雑音として処理してしまう、
だから語彙や文法知識がない状態でリスニングを続けていても意味がないという意見まであるのです。
ちなみに『脳が雑音として処理してしまう』と主張している本人達は脳科学者ではありません。
彼らは周波がどうとか小難しい説明文を並べて
『語彙や文法を知らないと英語は聞き取れない』
という英語雑音論を強く訴えます。
しかしながら、単語や文法を学ばなくても、英語の音声を正確に聞き取り、聞いた音声と同じように話すこと(リピート)は可能です。
これは僕自身がそうであったから自信を持って言えることです。
では、なぜリスニングを繰り返していても一向に聞き取れない人がいるのでしょうか。
それは彼らが『本気でその音声を聞き取ろうとしていない』という非常に単純な理由に過ぎないと思うのです。
読書をしながらBGM代わりに聞き流しているとか、別のことに集中していて注意力が失われているときは、日本語で言われた事さえ頭を素通りしてしまいます。
興味を持って、集中して聴いていない。これこそ脳が英語を雑音として処理してしまう本当の理由ではないでしょうか。
洋楽などが良い例です。
外国のポップソングの歌詞には、僕達の知らない単語や文法がたくさん混ざっていますよね。
いまだかつて聴いたことがないような発音をする、クセのある歌い方をするアーティストも大勢います。
にもかかわらず、僕達は同じ曲を10回、20回と繰り返し聞いていくちに、いつしかその歌を口ずさめるようになってしまう。
…なぜでしょうか。
それはその洋楽に興味があり、覚えたい、歌ってみたいという欲求が根底にあるからです。
実際に、英会話CDなどでリスニングをするとき、好きな洋楽を聴くように興味を持って、集中して取り組んでいる人は少ないはずです。
誰もこの英会話フレーズを覚えたい、口ずさんでみたいなどと考えず、
多くの人は『英語は集中して聴かなければ覚えられない…。』という焦燥や危機感からリスニングに取り組んでいます。
この業界では『単語や文法を知らないと英語は聞き取れない』という奇妙な考え方があるようですが、
そのように主張している人たちは、たいてい英語教室の先生であったり、英文法の情報商材を販売している業者であったりします。
ようするに、英語雑音論を煽っている人達が言いたいのは
『語彙や文法などを学んでおかないと英会話は出来るようにならないから、まずは私の提供するサービスを購入してください。』ということなんですね。
これは国家の財政危機だと国民の危機感を煽り『だから増税するしかないんだ!』という結論に強引に導く官僚とまったく同じ手法です。
『 単語や文法を知らなくても英語の音声を聞き取ることは可能です 』
僕自身、高校卒業以降はまったく英語学習をしていなかったため、当時は文法知識も中学生レベルでしたが、
U2やレディオヘッドといった洋楽をキチンとした発音で歌うことが出来たし、歌詞カードを見なくとも歌詞を正確に読み上げる(スピーキング)ことが出来ました。
というか、歌詞を英文筆記(ライティング)することすら出来たのです。
僕は洋楽を聴いていたおかげでリスニングがまったく苦にならなかった、学習の初期段階でも比較的容易に聴き取ることが可能でした。
文法の勉強を始めたのはそれからずっと後のことです。
メロディのある音楽と英会話を一緒にするなと言われるかもしれませんが、どちらも単なる音の連なりであることに違いはありません。
とまれ、僕は英文法や語彙を蔑にしろと言っているわけでもありません。
文法の基礎が出来ていると英語を聴き取ることが容易になるのも確かであり、
そのため『リスニング』と『英文法』のどちらを優先して学習すべきか(どちらを皆に奨めるべきか)で、随分と悩んだ時期もあったのです。
個人的には『リスニング』から始めることをお奨めしていますが、中学レベルから徹底的にやり直したいという人は『英文法』から始めても構わないと思います。
ただし、教材やサービスを購入する際は十分注意してください。
この業界には学習者にとって非常に迷惑な利権構造がありますから… [
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